2023.09

ドラム奏者であり、楽曲制作を行う森尾@takutomorio が開発した音響システムを用いた立体音響装置の製作を行いました。舞踏家の遊舞舎@yuko_keiko_yubusha のお二人と共に「naraka」という音楽作品として完成させました。

◾️作品説明
 本作品はミニマル音楽に由来する「繰り返す音」を「センサーを用いた定位操作」で演奏する6chの電子音楽作品である。
 一般に音楽は空間性に乏しい時間芸術であるが、ここでは時間的な展開を排除し、身体の動作によって音を動かすことで「空間としての音楽」の構築を試みた。 時間軸のない空間の展開という点から本作ではテーマを「地獄」とし、身体動作を起点に音が動くことで、この「地獄」という空間を形成していく。
 またキューブのなかで踊り手は奏者であり、演奏を通じて音楽=空間を構築していく。

◾️パフォーマンス
 土着的な身体を探求する舞踏による身体表現を起点に音が動くことで、「地獄」という音楽空間を形成している。 なお、パフォーマー2名はそれぞれ「鬼」と「人」を表しており、異なる視点における「地獄」を表すことで、より複雑な音響空間を構築する。 ここで「地獄」という表象は、空間と身体の接点としても作用する。

◾️空間としての音楽
 一般に音楽は、例えばクラシック音楽の形式に代表されるように、展開がある”時間芸術”である。 しかし「この場所にはこのような音楽が合う」というように、音楽にも空間を想起させる作用があるといえる。 そこで今回は時間的な展開を排除した音響(「繰り返す音」)と、身体動作によって音を動かす特別な音響装置(「センサーを用いた定位操作」による演奏)によって、音楽における空間性の拡張に挑んでいる。

◾️システム
 1辺2mの枠に6個のラッパ型スピーカーを取り付け、4.2chの空間を生み出す。また枠部分には身体の動きを検知するセンサーを取り付けた。
 この「キューブ」内でひとが動くことでセンサーが反応し、対応するスピーカーの音量が大小する。キューブのなかで身体が入ることではじめて音が聴こえ、身体が外に出ると音は聴こえなくなる。

Concept / Sound:森尾拓斗@takutomorio
Stage design :原良輔(演劇空間ロッカクナット)@ryosuke_hara_
Management :菅本千尋(演劇空間ロッカクナット)@chihiro.9112
Production:みやたかい@mijat_x
Photography:阿部修一郎@abbeing_1・奥津遼也@okutsukyouko
Editing:奥津遼也@okutsukyouko
Typography:岡田貴一@popceco
Performance :遊舞舎@yuko_keiko_yubusha
Voice:明澄@asumi_to_
Special thanks:美津野商事株式会社

【森尾拓斗プロフィール】
1998年生まれ。日本大学芸術学部音楽学科卒業。
ドラム奏者としてBunkamuraオーチャードホールでの演奏経験などを踏まえ、演奏・作曲を学ぶ一方で、大部分の時間を空間演出などの作品制作に費やす。卒業制作にあたり、絵画や彫刻に見られる空間性を音楽からも感じるとの着想から、空間表現を可能とする音響装置を考案し発表した。

【演劇空間ロッカクナット】
2022年結成。建築と舞台照明を得意分野に、ヒトとモノのコミュニケーションについて検討・実験しながら、劇場外の場における「演劇空間」の発見に取り組む。これまで福岡県糸島市の山、福岡県北九州市の階段、福岡県福岡市の集合マンションの屋上・学生寮を会場とし、演劇公演を行う。2022年、ふくおか地域づくり活動賞 準グランプリ。2023年より福岡・東京の2拠点。

本作品は、
演劇空間ロッカクナットよんかいめ。として、
2024年4月〜、福岡・東京にて上演を予定しております。